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株式会社Vincures(ウィンクレス) 増井琢也氏インタビュー

デジタルマーケティングやD2C事業を展開するVincures(以下ウィンクレス)。業界未経験者と外部のプロを組み合わせる組織づくりの根底には、一人ひとりの熱量が正しい方向へ向かうための「レール」を敷くという考え方がある。14歳から音楽と事業に取り組んできた増井琢也氏に、組織づくりとマーケティングの哲学を伺った。


BRAND CREWを使ってみて

――現在、BRAND CREWを通じて複数の業務委託人材に参画いただいています。どのような役割を担っていますか。

即戦力のプロフェッショナルとして動いてもらっているメンバーはもちろん、プロジェクトの中で一緒に何をやるべきかを議論しながら、元々依頼していた以外の部分も一緒に考えて依頼を広げていく、成長型の動き方をしてもらっているメンバーもいます。

単に作業を代行する存在ではなく、社内に実務レベルでディレクションできる人がいない領域でも、経営陣が示した方向性を理解したうえで期待以上のアウトプットを返してくれています。満足度としてはめちゃくちゃいいです。

――ウィンクレスに外部のプロフェッショナルが加わることで、どのような効果を期待していますか。

ウィンクレスは中途未経験の採用が大きな軸としてある会社なので、仕事を細かいタスクに切り分けて、漏れなく整理された状態にしておくことが、教育の面でも非常に重要なんです。

外部の経験者の方に業務の細分化まで担っていただけると、未経験メンバーが一つずつボールを持って経験していける。プロのやり方を見ながら学べる先輩的な立ち位置として機能してもらえると、未経験メンバーが担当できる仕事の幅が広がってマーケターとしても成長していくし、組織全体で動かせる業務量や案件数も増えていく。そこは今後実現したい形として考えています。

ウィンクレスの組織づくり

――増井さんは現場へのディレクションがとても手厚いイメージがあります。MTGの進め方から、入ったばかりのメンバーがこれを読めばすぐ動けるような虎の巻まで。なぜそこまで作り込むのでしょうか。

やる気や熱量を注ぐ先が明確になるようにしたいんですよね。

この考え方の背景には、音楽をやっていた頃の経験があります。音楽の世界には、ものすごい熱量を持っている人がたくさんいます。でもやり方が分からなくて無駄な努力をし続ける人が死ぬほど多くて。「自分のここを伸ばす」というレールをちゃんと敷いてあげたら、全員輝けるんですよ。熱量がある人にレールを敷いてあげたらワークするというのが、原体験としてあって、それを組織でもしているという感じです。

――一方で、日々の業務が細分化されていくほど、熱量の向け先が見えにくくなることもありそうですが、現場の仕事とはどうつなげていくのでしょうか。

めっちゃ難しいですよ、ほんとに。熱量を前面に出して引っ張ると絶対そうなる。だから1on1で向き合うことが一番の解決になっています。

うちの1on1はまず「あなたは死にます」というところから始めるんですよ。仮に、今みたいに元気に働けるのはおよそ40歳まで、と考えたらもう10年切っている人もいる。どんなタイムラインでどんな人生にしたいか、そこからまず話す。

そのうえで「あなたは何かの歯車の一部であり、同時にあなたはあなたである」という2つが存在するという話をします。爪を切って落ちた爪と体、どちらが「あなた」ですか、という話から始めて。あなたの細胞の集合体があなたであるように、会社という組織も集合体として生まれているから、あなたが一部であることはすごく重要なんだと。逆に、今いる場所でのフォーカスが合わないなら、合う場所に移った方がいいという話もちゃんとします。

小さな変化に気づいて声をかけ、必要であればもう一度一緒に考える。そういう接点の積み重ねが、組織の文化をつくっていくと思っています。

本物を作ったら、思うようには届かなかった

――増井さん自身のキャリアを教えてください。

14歳の頃からラッパーとしてイベンターをやりながら、転売ECビジネスも並行してやっていたのがビジネスキャリアのスタートです。アルバイトの経験はほぼなくて、高校生の頃からお金があればビジネスにトライしていました。

その中でも音楽事業に投資するために、携帯の代理販売や海外輸入の専売など、販売系のビジネスを回しながら、音楽では外国タレントの誘致・イベント企画・集客・楽曲制作・スタジオ運営・リリース・流通まで全部独学でやっていました。それを24、25歳くらいまで続けて、自分の中で120点の作品ができたところで音楽から離れました。

もともと、マーケティングというものに対してはかなり興味を持っていましたが、少し懐疑的だったんですよ。「ハンバーグを最高級ハンバーグと言って売りつける手段」みたいな、絶対悪的な視点で見ていて。だから本物を作りさえすれば届くはずだ、それをやりきった人間って意外といないじゃないか、と思って始めたのが音楽1年戦争でした。

4人でガレージを借り、内装をすべてスタジオに変えて、太陽をなくして朝晩の概念もなくして働き続けた。1日3〜4曲作り続けて、最終的には1000曲近くになった頃、「今まで自分たちがやってきた中でこれ以上ない」という作品ができた。音楽関係者からは「完璧だ」と評価されたんですよ。でも普段ライブに来て楽しんでくれている人たちは、あまりにも薄い反応で。

俺たちの100点とみんなの100点は違うのだということを目の当たりにしました。

本物を作りきったから、次は届け方を学ばないといけないと思ったのがマーケティングとの出会いです。

――その後はどのようにマーケティングの経験を積んだのでしょうか。

バイラルメディア全盛期のWebメディアに、ライターとしてインターンで入りました。初日に書いた1記事目で成果を出して、その月から社員になって統括になるみたいな感じになって。当時はFacebook広告が0.1〜0.2円で集客できた時代で、1PVあたり1円のアドセンス収益と組み合わせて0.8円儲ける。それを月間1000万PVで回して大きな利益を出すスキームを作っていました。今ウィンクレスで手がけている認知系のマーケティングにも、この頃の経験がつながっています。

マーケティングはDJに近い

――増井さんにとって、マーケティングとはどんな仕事ですか。

感覚的にはDJに近いんですよ。自分がスコープする市場に対してどんなメッセージを発して、そのメッセージを受けて市場の人たちがどんな変化を起こすのか。そこに鳴らしたい音楽がある。

それを実現するためには一定の資金供給もないといけないので、ステークホルダーの存在があったり、既存メンバーでいけるのか、他の楽器隊を入れないといけないのか、といった全てのバランスを考えた上でフロアで爆踊りを作る必要があるんですよね。

フロアに対してどうアプローチをかけるか、というのが自分の中のマーケティングの感覚です。

BRAND CREWへの依頼も「欲しい楽器隊を連れてきてもらう」感覚ですね。社内のメンバー、外部のプロ、クライアント、それぞれの立場や強みを理解しながら一つの場をつくっていく。マーケティングには、バンドやDJに近い面白さがあります。

――良いマーケター・悪いマーケターの違いはどこにあると思いますか。

当たりスキームが見つかった時に、買った人の数しか数えなくて、買わなかった人の数を数えないマーケターがあまりにも多いんですよ。買わなかった層に向けてアプローチをすれば絶対そこの層って顧客になるのに、そこを無視して同じ手法を続けてしまう。

ある施策で売上が上がったとしても、その裏側でブランドに対して悪い印象を持った人が増えているかもしれない。訴求の強い広告を打ち続けることでブランドイメージが損なわれることは分かっているのに、それを無視してしまう。良いマーケターは、どのタイミングで認知のシェアをどう変えていけばクリーンな状態に戻れるかとか、投資フェーズに合わせて次の方法へ移るとか、そこまで思いを馳せられないといけない。

獲得を優先する時期もあれば、認知やブランドへの投資を増やす時期もある。一つの勝ちパターンを見つけて終わるのではなく、その方法によって生まれたものと失われたものの両方を見て、必要なタイミングで次の方法へ移る。そこまで考えられるのが、良いマーケターだと思います。

――マーケターにはどのような経験が必要だと考えていますか。

マーケティングって総合格闘技なんですよ。特定の業務だけを知っていればいいわけではなくて、商売人としての視点からコーポレートの知識まで、幅広く身につける必要があります。だから若いうちは、一つの仕事だけに閉じず、いろいろな領域を経験したほうがいい。

ただ、広く浅くやればいいわけでもなくて。人は、自分が本当に興味を持ったことほど深く吸収します。一つのことを深く好きになると、「これは前にも見た」「ここに共通するパターンがある」と気づくようになる。その感覚を言葉にできたとき、初めて知識や技術として使えるようになります。

マーケターにも、職人的な感覚が必要で。音楽を本当に聴き込んできた人が、音のわずかな違いからイケてる・ダサいを判断できるように、マーケターもクリエイティブや商品の違いを感じ取れないといけない。だから採用でも「好きな音楽は何ですか、ゲームは何ですか」って聞いたりしますね。何かを深く好きになり、違いを見分けられるところまで取り組んだ経験は、マーケティングに生きると思います。

――これからのマーケターに求められることは変わっていきますか。

大きくはデータアナリスト的な職種がかなり重要になってくると思っています。AIによって施策やコンテンツをつくること自体は今後さらに自動化されていく。だからこそ人間には、出てきたデータや成果を正しく読み解いて、なぜうまくいったのか、次に何を変えるべきかを解釈する力が必要になる。数字を並べるだけではなくて、そこから意味を見つけてストーリーとして組み立て、次の行動につなげる。アナリスト的な力を持つ人材の重要性は、ますます高くなると思っています。

マーケターである前に、自分の人生を生きる

――どんな人材がウィンクレスに来てほしいですか。

自分の人生を自分の考えで生きられるようになること、自分の道を自分で歩けるようになること。それがスタートラインでもあり、ゴールでもあると思っています。

自分で選んだ道と人に言われてやっていること、それって熱中量が全然違うんですよ。マーケタースキルとしても、推進力としても、人生の幸福としても、業務と人生が一致しているかどうかがベースになってくる。自分の人生を自分の意思でアクションを起こしているという感覚を持ちながら仕事に向き合っている人でないと、マーケターとしても本当の力は出てこないと思っています。

そもそもマーケターって、自分という輪郭をキャッチアップできると、市場という輪郭もキャッチアップできるようになるんですよ。自分と違うものがあるから自分の輪郭が生まれるように、市場も同じ。だから「自分の人生を自分の考えで歩けているか」という感覚は、マーケタースキルに直結しています。そこに違和感を持っている、気づいているメンバーが来てくれるといいですね。

――増井さん自身は、マーケターというより起業家という意識が強いのでしょうか。

そうですね。自分では、マーケターというよりずっと起業家だという自認があります。IVSとかにもめちゃくちゃ顔出してたくらい起業畑が好きだったし、スタートアップボーイだったんですよ。

僕が事業を始める理由って、身近な人を助けたいとか、友人と何かをつくりたいというところから始まることが多くて。重松(ウィンクレス代表)との出会いも、あるタクシーアプリのローンチ企画を取ってきたはいいけどインフルエンサーの繋がりが全くなくて、友人を辿ったら重松がいけるよってなって。新宿のカフェで話して「一緒にやろう」となった。そういう人とのつながりが起点になっています。

――最後に、増井さんが大切にしていることを教えてください。

組織づくりもマーケティングも、根本は同じだと思っていて。熱量があれば、人は変わるんですよ。向き合って、ぶつかれば。マネジメントもマーケティングも同じで、熱量をぶつけると受けた人も熱量を受け取る。

僕はよく、イエス・キリストや吉田松陰の話を例に出します。彼らの弟子って、彼らが生きている間はむしろ裏切ったりする。でも死んでから弟子たちが燃えて、その熱量の爆発が完成するんですよ。覚悟を決めた熱量で何かとぶつかり続けると、自分の世代では完成しないかもしれないけど、それ以降の世界でスプレッドしていく。

自分の人生を自分の考えで歩む。描いた通りのタイムラインにはならないかもしれないけど、覚悟を決めた熱量でぶつかり続けた先は、自分が描いた方向に必ず向かっていく、そう思っています。


Profile

増井 琢也
株式会社Vincures

https://vincures.co.jp/


取材・文:BRAND CREW編集部
BRAND CREWは、D2C・Webマーケ特化の業務委託人材マッチングサービスです。

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